この7月19日から10月31日まで、
香川県と岡山県の間にある瀬戸内海の7つの島々で
<瀬戸内国際芸術祭 2010>というイベントが開催されている。
7つの島々の集落の、空き家などに現代アートを展示して
島々に観光客を呼び、地域を活性化させよう
という試みだ。
新潟県の妻有では、
里山を舞台に大規模な<大地の芸術祭>が開かれて、成功をおさめており
こちら瀬戸内海では、海と島々を器に
アートと共に瀬戸内海の魅力を発信しようと
県も準備に力を入れてきた催しなのだった。
幸い、我が家は、
島々へのフェリーの拠点となる高松港まで、車で5分ちょっと、と超近い。
これは、このチャンスに行っておくべきであろう
と、日曜日、
7つの島のひとつ、男木島(おぎじま)へ、まずは出かけてみたのだった。
午前8時。
各桟橋から、7つの島々へアートを観に行く客達で、高松港はにぎわっていた。
が、
ほとんどの客は、
20数年前からアートによる島起こしを始め
今や世界的にも有名になっている直島(なおしま)へ集中するであろう
と私と夫は読んでいた。
実際、直島行きの桟橋は、
釣り客や海水浴客とは明らかに違う雰囲気の老若男女で
ごったがえしている様子だった。
一方、
我々の乗るフェリー(と言っても、こんなに小さい↓)の周囲は、ごくのんびり。
ところが、
我々の乗る船の桟橋も、
乗船時間が近づくにつれ、直島行き以上にごったがえして来たのである。
理由は、ガキンチョの集団である。
我々が行こうとしている男木島とは、この島なのだけれども↓
その手前にある女木島(めぎじま)↓という島で
なんと、小学生のドッジボール大会が行われるらしく
何チームものガキンチョ団体が、
ワーワーキャーキャー桟橋に押し寄せて来たのである。
もちろん、船は女木島経由で、男木島へ行く。
・・・というわけで、大きくも無いフェリーにギッシリの人間を乗せて
夏の日差しの中、高松港を出発。
当然、座席になど座れないから、
皆、甲板にギュウギュウ詰めで立ちっぱなしである。
都会の通勤電車もかくや、という混みようなのだが、
どうにも納得がいかないのは、
電車と違って、船には厳格な<定員>というものがあるのではなかろうか?
今、もし、この船になんかあったら
救命胴衣、絶対に足らんやろ
と思いながら、暑い甲板に立っていた我々であった。
(・・・でも、まさかね。
定員以上のチケットは、普通、売らんわよね・・・)
ま、しかし、↑の写真でもわかるとおり、
女木島までは、高松港からほんの20分である。
20分後に、元気な小猿の集団は、ドドドドッと船を降り(↓この4倍は乗ってた)
残ったのは、我々同様、男木島へアートを観に行く人々。
ちょっとホッとした感じが、船内に流れる(みんな、やっと座れたので)。
と、出だしから笑わせてくれた船旅は、女木島からさらに20分で、男木島へ。
男木島は、島内の人口のほとんどが、ひとつの集落に集中しており
それが、港からすぐの、この集落だ。
平地がほとんど無い島なので、
山の高みへ登るように家々が連なっている・・・
というか、積み上がっている。
・・・で、冒頭にも書いたとおり、
この芸術祭
過疎の集落の空き家などを利用して、展示をしており
つまり、
男木島の場合、↑の集落のあっちこっちにアートが点在しているわけで
ようするに
こういう道や
こういう坂をのぼりおりして、地図を片手にアートを探して歩くことになるわけだ。
そう、歩く。
小さな島だから、バスもタクシーも無いもんね。
もちろん、こちらも、それは覚悟の上で来ているのだけれども
時は梅雨明け直後。
全国的に猛暑が続く中。
相当暑いだろうってことも、当然、覚悟の上で来たけれども
も~~~暑いのなんの!!!
スポーツドリンクを水筒に詰め、塩アメもバッグに入れて
山での草刈り並みの暑さを想定して来たけれども
「草刈りより
暑いやないかーーー!」
考えてみたらば、島の人口のほとんどがこの集落に集中している、
ほぼ、ここにしか家が建てられてないってことは
つまり、
ここが島の中で一番日当たりが良く、風がおだやかだってことだろう。
秋・冬・春は、そういう場所が天国だと思うけど
真夏はねーーー。
と、ハアハア言いながら、アートを探して歩く。
集落のあっちこっちに、こういう看板が立ち
この作品番号と、ガイドブックの地図を頼りに、ヨロヨロと、
人しか通れない細い迷路のような道(路地と呼ぶべきか)を上ったり下りたり。
で、探し当てた先の作品は
古い空き家に展示されていることが多く、
当然、クーラーは無いので、
窓を開け放ち、扇風機を何台も回して涼をとる。
・・・・・・・・けど、炎天下の坂を上ってきた我々には、効きませんわね。そんなの。
結果、どうなったかというと
展示の都合上、窓を締め切り、
部屋全体を何かで覆って、中が蒸し風呂みたいになっている展示場に出会うと
私は本気で
ムッとし、
ろくに見もしないで展示場を後にするわ、
逆に、
一ヶ所だけ、漆塗り作品の保存上、
バンバンにクーラーを効かせている展示場があって、そこに入ると
「こりゃ涼しいわ~~~」
と喜び、
最終的にですね、
すべての作品を見て回った後、我々が口にした感想は
「あの漆塗りのところは、涼しくて良かったのーーー」
良いのか???
こんな感想で。
とは言え、悪い面ばかりじゃない、とも思う、暑さの中の展示。
まず、客に妙な連帯感が生まれるのである。
そう広くない集落を、ひとつの船で来た数十人が歩き回っている。
あっちの展示場、こっちの路地で、同じ顔に何度も会う。
皆、首に手ぬぐいやらタオルやらをぶら下げ、
汗まみれで坂を上っている。
と
「同志!!!」という気持ちがわきあがってくるものである。自然と。
後から展示場に入って来た人に
「あそこに立つと涼しいですよ」
と、風の通り道を教えたり
「どっから来たんですか?」
なんて言葉を交わすようにもなる。
エアコンの効いた美術館では、こういうことは決してあるまい!
また、集落の中には、
自宅の庭を無料の休憩所に開放しているお宅が、何軒かあり、
「暑いでしょう?ちょっと休んで行かれたら」
と声をかけてもらえたりもする。
風の通る庭で涼ませてもらったり、
畑で採れたマクワウリをご馳走になったり。
少雨の瀬戸内海地域で、ましてや島だと、水の確保が大変だったと思うけど
実際「以前は、ホントに大変だった」
と昔の話を聞かせてもらったり。(今は、高松から送水管で水が送られている)
というわけで、
結局
「おもっしょかったなーーー(面白かったなーーー)
次は、どの島、行こか」
と、言い合って帰りの船に乗ることになった我々だった。
そう、エアコンの効いた美術館では得られない面白さが、ここにはある。
山の頂上へ向かって積み上げられた集落の、立派な石垣や、
その石垣をアップで見ると、それこそアートのように美しいことや
石垣の間に植えられたサボテンが、ユニークなアクセントになっていることや
路地で会ったおばあさんが
「このすぐ上に、アートがあるで」
なんて教えてくれることや。
そんなこんなで、集落そのものに関心が行ってしまい、
肝心のアート作品の写真は、ほとんど撮らずじまいだった私。
こういうのとか
こういう作品があります。
これは、神社の石段に沿って作られた、海の波をイメージした壁。
島に流れ着いた流木を積み重ねてあるのかしら?
と思ったら
オーストラリアのアーティストが、地元からユーカリの木を運んで来て
積み上げたものなのだそう。
オセアニアの海と瀬戸内海を結びつける試みだとか。
そんな、瀬戸内国際芸術際。
夏場にいらっしゃる方は、
「甲子園に高校野球の応援に行く!」
くらいの装備と心づもりと気合いでお越しください。
展示場では、小学生が参加できるワークショップも多々開かれており、
楽しそうでしたよ!