収穫した作物と、自家採種の種が、野良ワーカーへのごほうびだとしたら
畑にこぼれた<こぼれ種>から発芽した苗は
グリコのおまけ。
いやいや、見た瞬間、あっと驚き、「もうけた!」と言う喜びが体中を駆け巡る
あの感じは
さしずめ、商店街の福引きの金の玉。
もしくは、お年玉付き年賀葉書の一等賞か、万馬券・・・・・
まで行くとでかすぎるので、千馬券くらいかな?
そんな、こぼれ種の苗。
数年、畑を続けていると、かならずや天から授かるものなのだけれども
今年の我が畑にも、
その嬉しい授かりものがあった。
苗を見つけたのは、3週間ほど前のこと。
まだ何も植えていない、
苦土石灰と牛ふんを混ぜただけの畝に、ヒョッコリそれは現れていたのだった。
見つけた瞬間
私と夫は、同時に
「おおおっ!!」
と言い、ニンマリ笑った。
何故なら、顔を出していたのは見慣れたこの姿。
↑これはベランダのポッドで発芽させた苗の写真ですが
つまり、これと同じ、アヒルのくちばしのような、大きな目立つ双葉を持つ
お馴染みゴーヤの苗が、そこにはあったのだから。
「もうけた!」
なにしろ、ゴーヤじじいに取り付かれている私達である。
ゴーヤの苗は、値千金の宝物に見える。
ましてや、この時は、
まだベランダのポッドに蒔いたゴーヤの種が、うんともすんとも言っておらず
私達にとっては、<今年初のゴーヤ苗>だったのである。
もう、笠地蔵に宝物をもらったじいちゃん・ばあちゃんみたいに
私達は、大喜びで、その双葉を、そ~~っと移植した。
ゴーヤ棚を作る予定の地に。
ホントに、その時は、信じて疑わなかったのだ。
このアヒルのくちばしが、ゴーヤだと。
だって、どこから見ても、ゴーヤでしょう???
が、しかし・・・・・・・・・・。
・・・・・翌週、畑へ行ったあたりから
「・・・・・?」
と言う空気が、私達の間には流れ始めていたのである。
・・・・・なんか・・・・・おかしい・・・・・・・・・・?
その翌週、さらに、頭をよぎる疑問符の数は増した。
「本葉はどこ?」
ゴーヤと言うのは、発芽までに時間はかかるけれども
土の中で、しっかり準備を整えて発芽してくるとみえて
芽が出て来た時には、
たいてい双葉の間には、もう本葉が、ちゃんと用意されているものなのである。
だから、双葉がパカッと開いたら
そこには、立派な本葉がスタンバイしているはずなのだ。こんな風に。↓
が、畑のゴーヤの苗は・・・・・
いつまでたっても、パカ~~~ッとアヒルの口を開いたまま。
いっこうに本葉が姿を見せる気配は、無し。
「・・・・・雨が降って無いし、水が足りないからかしら・・・・・?」
頭の周りに、100個くらい疑問符を飛ばしながら
さらに翌週。
ついにわかった。
アヒルのくちばしの正体が!!
「大豆じゃ・・・・・」
昨夏、カメムシにたかられまくった私達の大豆。
それでも、何個かの豆は、カメムシの猛攻にもめげず成熟して
こうしてこぼれ種から発芽してくれたと言うわけだった。
感動した。
感激したけど・・・・・
ゴーヤだと信じて、大豆の苗の上にゴーヤ棚を作ってしまった
私達はいったい・・・・・・・・・・。
仕方が無いので、あわてて、再度移植しつつ
つくづく思った。
10数年前、
魚は切り身のまま、海の中を泳いでいると信じている子供達のことが
マスコミで話題になり
「いや~~~!信じられへんわ」
なんて、私も思っていたのだけれども
・・・・・・・・・・その子達と、私や夫も、どっこいどっこいかも。
なにしろ、去年植えた大豆は、苗を買って来て植えたもので
私達は、大豆の双葉の形なんて、全然知らなかったのだ。
それが、これほどゴーヤそっくりだったなんて。
日頃食べている野菜や果物も
双葉や本葉の形がわかるのは、自分で育ててみたものだけ。
その作物は、どんな花を咲かせるのか、
どんな風にして実を成らせるのか、
全然知らないものだって、山ほどある。
「食べているもののこと、全くわかってないことばっかりやなぁ」
と、しみじみ思わされた<アヒルのくちばし>の一件。
でも、
だからこそ、新しい作物作りに挑戦した時のワクワク感と感動は、
ものすごく大きいのですけれども。