思えば、子供の頃身近にあった庭は、徹底して「観賞用」の庭だった。
両親が一戸建てのマイホームを建て、町営住宅から引っ越したのは
私が小学校3年生の時。
1970年。
高度経済成長の真っ只中で、
結婚してマイホームを持つのがすごろくの上がりみたいな価値観の頃だから
両親も張り切ったのだろう。
造園屋さんに頼んで、そう広くない敷地にいっぱい庭木を植えた。
カシとか椿とかイヌマキとか
観賞用の庭木である。
加えて、でっかい庭石を何個も注文して、池も作って
日本庭園を造りあげた。
その庭園は、今も健在である。
庭木の多くも、ちゃんと残っている。
実家に行くと、子供の頃とちっとも変わらない景観がそこにあるわけだ。
けれども
今、見ると、どうにもこうにも寒々しいわけですな。この光景が。
子供の頃は、それなりに日本庭園(あくまでも狭い小さな庭ですよ)は
良い私の遊び場だった。
でかい庭石に登って、妄想の登山の世界に遊んだりしていた。
カシの木やイヌマキも、妄想の中では立派なジャングルだった。
しかし、
今の自分にとっては、つくづくこの庭は「見るだけ」の庭だなぁ
と
実家に行くたびに思うのだ。
つまり、実用的なものが全く植わっていない。
最近、里山近くの農家の庭を見て、とてもうらやましく思うのは
家の周囲に必要なものが何でも揃っていることだ。
ミツバやミョウガ、ネギと言った薬味。
柚子、スダチ、柿、栗などの果実。
ちょっとした焚き付けに使える落葉樹の小枝。
昔は食器の代わりに使ったのだろう、ハランなどなど。
もちろん、それらは自然にそこに生えてきたものじゃなくて
農家が代々、使い勝手が良いように母屋のそばに植えてきたものだろう。
そういうものがちょっとずつ生えて、庭をビッリシと埋めている。
それがまた、実にバランス良く調和して育っているように見えて
見てて気持ちが良いし
なんだか落ち着くのだ。
そういう庭を
「ええなぁ~~~~~~」
と思う今、
観賞用に徹した実家の庭を見ると、(悪いけど)ちっとも楽しくない。
実家だけじゃない。
今、思い出しても、友達の家の庭も、親戚の家の庭も
みんな「観賞用」の庭だった気がする。私が子供の頃は。
農家は別だった・・・・・・
いや、
農家の友達のところも、
裏庭はともかく表庭は、でっかい庭石とか灯篭とかあったし
植わっていた樹も、松とかコウヤマキとかカエデとか
「庭」のための樹だったように思う。
要するに、高度経済成長の時代は、そういう庭を造るのが流行っていた
ということなのか?
さて、昨日、日曜日、A町の土地へ夏野菜の定植に行って来た。
これが、今現在のA町の姿。
手前の畝ふた畝は、冬野菜用の畝で、この夏は空き地の予定。
しかし、ただ空けておくのももったいないので
buribushiさんからいただいた「おらちの種子」在来種の高菜を蒔いてみた。
若いうちにどんどん摘んで、間引き菜として食べれば良いそうなので
盛大にばら蒔いてみたのだ。
この時期なので、若い葉は大いに虫に食われて穴だらけなのだが
売り物じゃないから気にしない。
虫と競争で食べることにする。
そして、この空き畝からは、別の収穫物も期待できそうなのである。
というのも
ここにあるのは、例のお向かいさんからいただいて運び込んだ土なのだが
こぼれ種など色々混じっているらしくて
こちらは、ヒョッコリ現れたジャガイモ。
今のところ5本は出ているのだが、さて、どれくらい収穫できるかな?
棚からボタモチなので、あまり図々しい期待はしないけれども。
こっちは、サニーレタスの芽。
高菜と同じで、大いに虫に食われることと思うが
虫と競争で食べたい
と思っている、こちらも棚からボタモチ作物である。
そんなサプライズを別にすると、A町の菜園は、まだまだまだまだこれから。
でも、これから、
必要なものはここで手に入る
我が家にとって、実用的な場所にしていきたいと思っている。
私は典型的な実用派である。
花を楽しむためや紅葉を愛でるための植物は、
おそらくここには植えないだろうと思う。
魚座がロマンチストだなどと、いったいどこの誰が言い出したのであろうか。
おかしいな。
私は、花より団子。美は実用にあり、だ。
昔の農家のように、食用、薬用、燃料すべて家の周りで揃える・・・・・・
とまではいかないけれども
ここを役に立つ、自分にとって気持ちの良い場所にしていこうと思う。
少しずつ。
と言うわけで、ひびきさんからいただいたローズマリーの苗木を
昨日、植え替えた。
地もぐり豆、青シソ、赤シソ、ミントの苗も定植。
先週、定植したモロッコインゲンと花ササゲは
さっそくカメムシにたかられていた(ぬおお!!!!!!)ものの
無事根付いたようで、さらにツルを伸ばしている。
写真には撮らなかったが、麻ヒモで編んだネットの間には
塩梅がいいらしくて、さっそくクモが巣を張っており
その姿に心がなごんだ。
シイタケのほだ木の下に蒔いたミツバには、
やっとミツバらしい形の葉が出てきた。
ここからの収穫の喜びも、これから少しずつ増えていくことだろう。
(虫との闘いも増えていくけどさ)
この晩は、「おらちの種子」の高菜の間引き菜でパスタ。
1分ほど間引き菜を下ゆでしてから、
ニンニク、唐辛子(鬼あきた)、アンチョビで炒める。
高菜のほろ苦さと、ピリリとした辛味がほど良く残り
とても美味しい一皿となった。
来週も、これ、作ろう!!!!!!