1962年生まれの私が、小学校の中学年くらいまで
父の実家には、牛がいた。
専業農家だったので、農耕用の牛だ。
でも、私がもの心ついた頃には、
もう、田んぼは耕運機で耕す時代が来ていて
いつ遊びに行っても
牛は、仕事を免除され、牛小屋でのん~びりとすごしていたように思う。
父の実家に限らず、
当時は、まだ牛のいる農家が近所にも珍しくなかった。
また、ヤギのいる農家も、決して少なくはなかったと思う。
今にして思えば
ヤギと言うのは、当時、肉を食べるわけでもなし
農家の子が、ヤギ乳を飲んでいたわけでもなし
(周囲の同級生で、飲んでいる子はいなかった)
じゃあ、何故、飼っていたのだろう??
と不思議になってくるのだけれども
第二次大戦後の大変な食糧難の時期
貴重なタンパク源として、ヤギを飼うのが流行っていたと聞くから
その頃のなごりで、私が幼少の時分にもヤギが飼い続けられていたのかな
と思う。
でも、小学校高学年~中学校と進むうちに
ふと気がつけば、周囲の風景からヤギはいなくなっていた。
牛と共に。
以来、私にとってヤギとは<動物園で見る生き物>となった。
大人になって、沖縄へ行き、とても新鮮だったのは
離島には、たいていヤギが飼われていたことだった。
サトウキビ畑へと向かう道端に「ンメエ~~」、
農家の裏庭に「ンメエ~~~」。
ごくごく当たり前に、ヤギがつながれていたのだ。
沖縄は、ヤギ料理が有名である。
沖縄県民の中でも、好き派と嫌い派の真っ二つに分かれる食べ物だそうで
必ずしも人気のある食材ではないけれども
<ヤギを食べる>こと自体は
ビックリすることでも、ゲテモノ食いでも何でもない。
沖縄本島や、石垣島には、<ヤギ料理専門店>が、いくつもある。
ただ、
小さな離島に行くと、そう言う専門店は無いので
自宅でつぶして食べると聞いていた。
お祝いごとのある時など
飼っているヤギを食べると言う話だった。
が、
そうは言っても、今どきはもう、
自宅でつぶして食べるってことは無いんじゃないかな~?
なんて、離島でヤギを眺めながら、当時の私は考えていた。
本土復帰までの、非常に貧しかった時代ならわかるけれども
復帰後
ファストフード・チェーン店は次々に出来るは
スーパーマーケットはボコンボコン建つは
市場へ行けば、リンゴや白菜、大根まで売っている、今の沖縄で
わざわざヤギを食べるかなぁ~?
お祝いごとのごちそうなら、牛でも鶏でも、他に何だってあるじゃないの。
飼っているとしたら、肉のためじゃない!
と、私は思った。
多分、草刈り要員として飼っているのでは??
そう、ご存知の方も多いでしょうけれど、ヤギは、ものすごく大量の草を食べる。
そして、ここは、亜熱帯の沖縄。
一年中、ドンドコドンドコ雑草は生え続ける。
草むらにはハブが潜むので
家の周囲や畑への道は、常に草を刈っておかなければならない。
こういう土地で、
彼らほど、頼りになる雑草刈り要員はいるであろうか???
実際、
離島で見たヤギ達の周囲は
どっこも芝刈り機を回した後のように、スカーーッと雑草が無くなっていた。
地面が見えるくらいに、草は短く食べつくされていたのだ。
これなら、ハブも潜めまい。
ヤギ達は、きっと超強力・草刈り要員として飼われているのだわ!今は。
そう思っていた。
が、
10年ほど前、波照間島(はてるまじま)と言う離島に行った時のことである。
その島にも、
あっちに「ンメエ~」
こっちに「ンメエ~~」
と、たくさんのヤギがつながれていたのだけれども
民宿の夕食時
地元の人達が遊びに来て、観光客の夕食の輪に加わったのだ。
そして、彼らが、自分達の日頃の生活ぶりを話して言うには
「夕方、仕事が終わったらさ~、帰りにヤギを見に行くんだよね~」
10人ほどいた民宿の客は、うむうむとうなずいた。
可愛いヤギを見物に行くのね♪
と思ったのだ。
自分達が、島のあちこちで、可愛い可愛い♪とヤギを眺めていたから。
しかし、彼らが続けて言うには
「盗まれてないかどうか、確かめに」
盗む??
ヤギを???
島には、ヤギを盗む人が、ちょくちょくいるのか?
でも・・・・・、盗んでどうするの?
売ってお金にするの?
・・・・・けど、沖縄本島や石垣島ならわかるけど
この周囲15km、人口600人強のこの島に
盗んだヤギを売りさばけるブラックマーケットなんて存在するんだろうか?
・・・・・・・・・・しないわなぁ~・・・・・・・・・・。
じゃあ、島外へ売りに行く?
行くとしても連絡船に乗ったら、
「誰それが、いついつ、ヤギ連れて石垣島へ渡ったなぁ」
ってバレバレだろうに。人口600人強の島じゃ。
・・・・・では、
やっぱり、自分ちで食べる・・・・・?
どう考えても、それしか結論はなさそうに思えた。
同時に、ヤギの存在の大きさを思った。
現役の食肉であり、超強力草刈り要員であり、ペットではなく家畜である。
私が子供の頃、近所にいたヤギ達よりも、
もっと存在感のある沖縄のヤギ。
今の私が住む場所には、もうこういう生き物はいないなぁ~・・・と。
さて、先日、
家の近所の屋島山のふもとを散歩していた時のこと。
屋島山のふもとは、日当たりが良く
柑橘類の畑がたくさんあるのだけれども
その柑橘類農家の庭先に、こんな生き物を発見!
おうおうおうおうおう。可愛い!♪
数年前、ここを通った時にはいなかったぞ、この子達は。
見事に食べつくされた、庭の草。
庭の隣に、柑橘類の畑があったのだけれども
畑の下草も、見事にバリカンで刈ったみたいに短くなっていた。
きっと、草刈り要員として働いているんだろう、この子達は。
彼らが来る前は、
もしかしたら、夏場、
下草刈りの手が回らず、畑には除草剤を使っていたのかもしれない。このお宅も。
でも、今は。
いいなぁ~~。ヤギ。
うらやましくて、見つめてしまった。
我らが里山も、夏場は、畑といい、山の中といい
草刈り、草刈り、ひたすら草刈りの日々だ。
なので、沖縄でヤギを見ている私と夫は、夏になるたびに
ヤギ、飼いたいなぁ~~
なんて言っては、ため息をついている。
もちろん、あの里山は、我々の土地じゃないので飼えるわけはないのだけれども。
いいなぁ~~。ヤギ。
もちろん、この香川県では、食材じゃなく
純粋に草刈り要員としてここにいるのでしょう。
有機農法の広まりと共に、<ヤギで草刈り>と言うやり方も
取り入れられ始めているのかな。
この香川県でも。
夏になったら、また来てみよう
と思った。
雑草ボーボーになる夏場こそ、彼らの真の威力が発揮される時。
その時、また来て、彼らの働き者ぶりを拝んでみようじゃないの
と。
なにしろ、この街なら、彼らも盗まれる心配もないし・・・・・。♪