素晴らしい小春日和の中、
縁側や囲炉裏の前で、本など読みつつダラダラしていた私達。
<その1>に
「古民家の室内は、大変に暗い」
と書いたけれども
ここ<中石家>に関しては
なにしろ開放部がメチャクチャに広く、

家の前方は、全部窓
みたいな造りなので、結構明るかった。
もちろん、
実際に生活していた頃には、
縁側に面した障子も閉めていて、暗かったのかもしれないけれど、
展示中の今は、障子も何も取っ払って開けっ放し。
そして、折りしも、時は11月の終わり。
冬至も近く、お日様の光は、室内に長~く長~く入って来ていて
本を読むにも、まったく困らない明るさなのだった。

「暇やし、このまま持って来た本、読破しちゃおうかしら・・・・・」
なんて、ポカポカの日差しの下、呑気に私は考えていた。
しかし、
古民家の平和は、そこまでだった。
・・・・・知らないあいだに、我々の周囲には、
なんとも困ったものが漂い始めていたのだった・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・臭くない?」
始まりは、私のこのひと言だった。
「・・・・・・・・・・まぁ、豆たんの匂いっちゃ、こんなもんやろ?」
「・・・・・・・・・・まぁ・・・・・、確かに・・・・・・・・・・」
記憶の底からよみがえる、子供の頃にかいだ豆たんの匂いって
確かにこういう、独特のものだった。
でも・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「やっぱり臭いわ!
豆たんて、こんなに臭い、
きつかったかのーー!?」
「わ、忘れた。それより、なんかのどが痛くない??」
「痛い」
「豆たんの煙のせいやで。これ。
ちょっと、もう我慢できへん!!」
子供の頃の思い出の中に、豆たんの形はあった。
おばあちゃんが豆たんを使って、何か焼いていたシーンも覚えていた。
そして、豆たんを焼いた時の匂いも。
けど、
それ、こんなに鼻につく臭いだったっけ???
そんでもって、
その煙のせいで、こんなにのどがヒリヒリしたものだったっけ???
もしかしたら、子供の頃も「くっさいなーー」と思っていたのかもしれないし
煙でのどが痛くなっていたのかもしれない。
でも、
「豆たんって、そういうものや」
で流していたのか?それで記憶に残っていないのか??
ともあれ、今の私達には
「臭いーーー!のど痛いーーー!!」
な豆たんの煙。
いや、臭いのは我慢できるとして、のどが痛いのは・・・・・。
大体、これって、炭の粉を何かの薬剤で固めているのでは無かったっけ?
だとしたら、のどが痛いのは、薬剤のせい?????
げげげっ!だったら・・・・・・・・・・
「い、いかん。外へ出よう」
化学薬品のせいかも?
という不気味さもあいまって、辛抱たまらず家から逃げ出した私達。
しばらく村内を散策して、綺麗な空気でも吸うしかあるまい
と、豆たんの香り漂う中石家を、足早に後にしたのだった。
村内は、ちょうど紅葉も見ごろで、散策にはもってこいの日。
そういえば、他のグループはどうしてるかな?
と見に行きたい気持ちもわいて来て
散策がてら、トコトコと出かけてみることにした。
行き先は、3世代9名の大グループのいる家。
ここは、かなり広めの農家なのだけれども
今回のツアーで、唯一、
おくどさんと囲炉裏で、食事を作ることが許可されていた家でもあった。
ツアーの<オプション>として
四国村が、薪や食材も用意して<かまどで食事作り体験をしませんか?>
と呼びかけてやっていることなのだけれども
さて、
その昼食作りは、どんな具合かな~~~?
と行ってみると・・・・・
やってます!やってます!燃えてます。おくどさん!↓

おくどさんをつかさどるのは、この3世代グループの長老、じいちゃん。
声をかけてみると
「もう数十年ぶりで、こんなんしますわ~~~」
と、実に楽しそう。
「もうちょっとしたら、釜が吹いてくるから、そうしたら火加減が難しい。
燃えてる薪を、さっと取って、火を落とさんと」
などと、技について語る姿も頼もしく
「もう、ご飯炊きは、じいちゃんでないと!」「そうや!そうや!」
と皆に言われて、ここに陣取っているのでしょう。
カッコイイぞ!じいちゃん♪
・・・・・しかし、それにしても、このおくどさん。
お気づきでしょうか?土間では無くて、板の間にあることに。

なんでもこの農家は、和紙の産地に建っていた家だそうで
和紙作りのための楮(こうぞ)を煮る大鍋と、ものすごくでかいおくどさんが
土間には据え付けてあるのだ。
それでスペースが無くなって、こんな、部屋の上がり口のところに
料理用のおくどさんを据えることになったのだろうけれど・・・・・
・・・・・・・・・・今の感覚からすると、
板の間におくどさんって・・・・・・・・・・。
古典落語に出て来る長屋も、こういう風に、板の間におくどさんをしつらえてあるから
こういうのは<有り>なんだとは、理解できるけれども
でも、
やっぱり、なんだか・・・・・・・・・・
床が燃えそうで・・・・・・・・・・。
もちろん、
そうそう火が移るものではなく
だからこそ、この古民家も、現代までこうして建っているのでしょうけれども。
さて、昼げの白い煙を吐く農家を後にして
四国村に隣接したうどん屋さんでうどんを食べ
ゆ~~~っくり散策しながら、中石家へ戻って来た我々。
我々がお借りした<中石家 主屋(おもや)>の隣には、
<中石家 隠居屋>と言う建物があり
ここには、小さい娘さん二人を連れたご夫婦が滞在しておられた。
が、
小さな娘さん達は、やはり外が良いとみえて(子供が古民家見てもね~)
皆で遊びに出たまま、まだ帰らず。
ちょうど良いから、写真をたくさん撮らせてもらったのだけれども
中石家が建っていた祖谷(いや)地方には
子供に代をゆずったら、ご隠居さんは主屋を出て、隣に隠居屋を建てて住む
と言う習慣があったそう。
そして、
かつて狭い山肌に、横一列に並んで建っていた隠居屋と主屋、
作りは全く同じなのだけれども
ちょっとだけ屋根の高さが違います。(右が隠居屋)↓

なんで隠居屋の屋根が低いか?と言えば
ここが、なんとバリアフリーの家だから。↓縁側だって床だって、こんなに低い!

なるほど~~~~~。
でも、こう言うバリアフリーの家に移り住んでも、
ご隠居夫婦、
バリバリと農作業を、やっておられたのでしょうね。きっと。
さてさて、隠居屋から、隣の主屋に戻ると
長持ちする豆たん、まだまだ元気にチロチロと燃えております。根性あります。
・・・・・仕方がないので、暖かい縁側に避難して
そこで読書しながら過ごすことに・・・・・。

もう、こうなると、
<古民家へ滞在しに来た>のか
<古民家の縁側へ滞在しに来た>のかわからなくなってくる。
でも、優しい日の光の中、
数ページも読めば、もう、うつらうつらとまどろみの世界へといざなわれる私達。
<古民家の縁側へ昼寝しに来た>のか。いったい。
ただ、うつらうつらしつつ思ったのは、
この家がバリバリの現役だった頃、
こんなにお天気の良い日、
縁側で本を読んだりウトウトしたりする人間は、絶対にいなかっただろうな
と言うこと。

この素晴らしいお天気ならば、
皆、間違いなく山仕事か野良仕事に出ていたはず。
たとえ、もう野良に出なくなった老人達でも
縁側で縄をなったり、豆の選別をしたり、
石臼で粉を挽いたりして働いていたことでしょう。
ウトウトしているとしたら、それは、赤ん坊か幼児だけで・・・・・。
ああ、それが、
働き盛りのこの歳で、こんなイベントに参加して
ここで昼寝をしつつ遊んでる私って・・・・・・・・・・・・・・・。
と、便利になった代わりに
随分と怠け者になった現代人の自分を、ひしひしと感じたこの日。
もちろん、
昔が重労働過ぎた
と言うのもあるのですが。
床板のすき間からは、地面が見え、
断熱材などもちろん無いし、さぞや寒かったのだろうなぁ
などと、
昔の生活を、少しは感じることもできた<古民家滞在>。
午後4時。
係りの方に御礼を言って四国村を出て思ったのは
来年も、またあったら参加してみたいな。
でも、
その時は、絶対に備長炭を持参するぞ!!!
(だって、家には、除湿用と、水道水の浄化用に
備長炭のストックが山ほどあったんですから)
でした。
ああ、楽しかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※
ところで、この日、最後まで「持って行くかどうするか?」で迷ったのが
三線(さんしん)。
沖縄の、あの蛇皮線とも呼ばれる楽器ですが、
あれをマンションで練習する際、
音が響かないように消音駒(しょうおんうま)と言う消音器具を付けて、
普段は練習しているのです。
が、
音が響かない器具だけに、
本当の音、
綺麗な音が出ているのか?とか、どれくらい美しく響いているのか?とかが
弾いていても全然わからない。
なので、
「古民家で、普通の駒(うま)を立てて、普通の音で弾いてみたい!」
と思っていたのですが・・・・・・・・・・
結局、
「あまりにも下手な演奏を聴かせると、他の人に迷惑」
と考え、直前で、持参するのを止めた私。
ところが、
皆、同じようなことを考えるものとみえて
参加グループのうちの、若い女性4人組の皆さん、
当日、打ち合わせの際に顔を会わせますと
皆、何やら楽器ケースを手に手に、参加されているではありませんか!??
そのうちの二人がお持ちの楽器は、
ケースの形からは、「何か?」を判断できませんでしたが
中の一人が持っていたケース。
これは一発でわかる。間違いなく三線のもの!!!!!
あらーーーーーっ!やられた~~~~~~~(って何を?)。
後で彼女らが滞在している農家をのぞきに行きますと

確かに、バンボンバランとお嬢さんが三線を弾いてらっしゃいました。
謎の楽器ケースの方は、どうやら二胡だったもよう。
三線と二胡のグループだったのですね。素敵。
もちろん、
観光客が前を通る古民家で、練習しよう
と思って実践するくらいだから、私よりよ~~~~~っぽど上手でしたが。
でも、
できることなら、私も、次に参加する時は、
三線も持って行くぞ!!
もちろん、もっと練習を積んで、レパートリーも増やして(今、2曲・・・)からですが。